治療家・専門家向け

痛みも、病気も、たどれば同じ根本|「悪くなる順番」と負のループをどこで断つか

大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)

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※本ノートは治療家・医療従事者向けの専門的な覚え書きです。一般の方の自己判断・施術の代替を意図したものではありません。引用文献はエビデンス確認用であり、当院の施術効果を保証するものではありません。

はじめに——「悪くなる順番」を、患者にどう説明するか

第5号で、治療の質は見立て点の的確な解除で決まると書いた。今回はその手前——そもそも体は、どういう順番で悪くなっていくのかを書きたい。私は患者さんにも、この「悪くなる順番」をよく説明している。順番が見えると、どこを治療で断つべきかが見えるからだ。以下は私の臨床上の身体観(私見)であり、定型の医学モデルではない。

負のループ——機能低下から症状まで

私が見ている流れは、おおよそこうだ。

  1. 入力(きっかけ)——疲労・寝不足、栄養が足りていない、体に合わないものを食べている。そうした様々な負担で、まず筋肉の機能が落ちる
  2. 構造の変位——機能の落ちた筋肉は、関節を支えきれない。支えを失った関節がズレる
  3. 代償——ズレを放っておけないので、体はより強く筋を緊張させてズレを支えにいく。ただでさえ機能低下している筋に、「ズレを支える」という新たな負荷が乗る。
  4. 硬結の蓄積——過剰に緊張させられた筋は、ある種のトリガーポイント、いわゆる筋硬結をつくる。同時に、ズレた関節のまわりのファシア(筋膜を含む結合組織全体)にも負担がかかり、硬さが蓄積していく
  5. 循環障害——硬くこわばった組織の中では、局所から全身の血流が落ちる
  6. 出力(症状)——血流の落ちた体に、普段の生活でいつも負担がかかる場所、あるいは昔ケガをした古傷——つまりその人のウィークポイントに、症状が顔を出す。痛み、しびれ、神経痛、形は人によって様々だ。

そして一度ここまで来ると、悪い状態のまま生活が続くので、ループは何度も繰り返される。これが、私が「負のループ」と呼んでいるものだ。

痛みも、たどれば同じ根本——出口が違うだけ

ここからは、特に私見の色が濃い話になる。

私はいつも患者さんに、「それが痛み・しびれに出るのか、それとも別の不調に出るのかは、その方によって変わります」と話している。症状の"出口"はウィークポイント次第で変わるが、たどっていくと根は同じ——循環の悪化と、結合組織・関節の機能低下——だと考えている、ということだ。

※ここは院長の臨床経験に基づく身体観であって、科学的に証明された定説ではありません。また、整体が病気そのものを治す・防ぐという意味ではまったくありません。気になる症状や全身の不調は、まず医療機関での検査・診断が大前提です。

治療家として大事なのは、この考え方を**「だから整体で病気が治る」という方向に絶対に使わないことだ。私がこの順番を意識するのは、目の前の痛み・しびれを診るときに、出口(症状の場所)ではなく根(循環・土台)を見るため**であって、それ以上でも以下でもない。第4号の「主訴の場所を治療しない」も、この身体観から来ている。

どこで断つか——関節ファシア整体の役割

負のループだとわかれば、断ち方も見えてくる。私がやっているのは二つだ。

  • 関節の数ミリのズレを戻す——②③で生まれた構造の変位そのものを整える。
  • ファシア全体の硬結を緩める——筋・筋膜を含む結合組織に蓄積した硬さ(④)を解除する。

ズレが戻り、硬結が緩めば、こわばりが取れて血流が戻り(⑤の反転)、ウィークポイントへの負担が減って症状の出力が下がる——というのが、私の治療仮説だ。ここで効いてくるのが、見つけた一点を雑に潰さず的確に解除する技術で、それは第6号に書いた**方向・強さ・秒数、そして「緩んだら止める」**の話とそのままつながる。

患者にどう渡すか——「階層」で見せ、介入の余地を示す

患者説明では、この流れを階層として見せると伝わりやすい。

生活習慣(疲労・睡眠・栄養)→ 筋の機能低下 → 関節のズレ → 循環の悪化 → 症状

この階層のいいところは、患者さん自身に手を出せる場所(一番上の層)がはっきりすることだ。治療で関節とファシアを整えるのは私の仕事だが、土台の負担を減らす——よく眠る、栄養を整える、そしてよく歩く——のは患者さん自身にしかできない。この「歩く」については第8号に分けて書いた。治療と生活、両輪で初めてループから抜けやすくなる、という渡し方をしている。

用語の整流——「筋硬結」と「ファシアの硬さ」

最後に、自分の説明がぶれないための用語整理を一つ。④で「筋硬結」と「ファシアの硬さ」を分けて書いたが、これは概念上の区別だ。

  • 筋硬結(トリガーポイント)——筋肉の中にできる、圧して痛む小さな結節。
  • ファシアの硬さ——筋膜・腱・靭帯・皮下といった結合組織全体の、粘弾性が変わって硬くなった状態(スティフネスの上昇)。

臨床では、両者を厳密に切り分けるより、「結合組織の過緊張・硬化」としてひとまとめに捉えて解除しにいくことが多い。ただ、説明や記録のときに概念として区別できていると、自分が今どこを相手にしているのかがぶれない。ファシアの科学的な裏づけは第1号に整理した。

補足

本ノートは私の臨床上の身体観・考え方であり、すべての症例・すべての方に当てはまると主張するものではない。痛み・しびれ・全身の不調の背景には医療機関での検査・診断が必要なものがあり、本ノートはそれに代わるものではない。改善の感じ方には個人差がある。同業の参考になれば幸いだ。


本ノートは治療家・専門家向けの覚え書きであり、特定疾患の診断・治療や、当院施術の効果を保証するものではありません。

大黒 充晴

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)

枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。

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