治療家・専門家向け

硬結という「水中の米粒」を解除する|方向・圧・秒数、そして“緩み”で止める

大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)

この記事をAI音声で聴く
0:00 / 0:00
※本ノートは治療家・医療従事者向けの専門的な覚え書きです。一般の方の自己判断・施術の代替を意図したものではありません。引用文献はエビデンス確認用であり、当院の施術効果を保証するものではありません。

はじめに——「見つけたあと」をどう詰めるか

第5号で、治療の質は見立て点の的確な解除という二つの軸で決まると書いた。見立て(どこが原因か)は第3号の動診に譲り、ここでは後者——見つけた一点を、どう解除するかを書く。以下は私の臨床上の進め方(私見)であり、定型の手技マニュアルではない。

治療ポイントは「面」ではなく「点」

関節の数ミリのズレも、ファシアの硬結も、手には硬さとして返ってくる。そしてその硬さは、実のところ**大きな面ではなく、ごく小さな「点」**であることが多い。米粒ほど、と言ってもいい。

「だいたいこのあたり」では、その点に圧は届かない。点をどう捉えられるかが、まず一つ目の関門になる。

比喩——体という「水の中の米粒」

イメージを言葉にすると、こうだ。人の体は、およそ6割が水分でできている。つまり、ある種の液体の中に、米粒大の硬い点が浮かんでいる。私はそれを、液体の中から探し当て、的確に動かそうとしている。

水の中の米粒を、ねらった向きに動かす——そう考えると、なぜ「強く押せばいい」わけではないかが見えてくる。雑に大きな力を加えれば、点は逃げるか、まわりごと潰れる。届かせたいのは、あくまでその一点だ。

解除を決める三つの変数——方向・強さ・秒数

点を捉えたら、私は次の三つを調整している。

  1. 方向——その点が解除される向きに圧を加える。向きが合っていなければ、いくら押しても緩まない。
  2. 強さ——行き過ぎても、足りなくても、その点に「改善される圧」は届かない。点に対する適量がある。
  3. 秒数——その圧を、何秒加えれば点が緩むか。長ければよいというものではない。

方向・強さ・秒数のどれか一つでもずれると、同じ「硬結を取る」でも結果は変わる。ここが第5号で書いた「質」の中身だ。

最も大切なこと——「緩み」を感知して、止める

そして、私が最も大切にしているのが、緩みの感知だ。

加えた圧で点の硬さが消えていく——その緩んだ感覚を、手で捉えられるかどうか。これが要になる。なぜなら、緩みが起きているのに押し続けることは、逆に過剰な刺激=ダメージになるからだ。

「もっと効かせよう」と長く・強く押すのは、多くの場合、的を外している。緩んだら止める。これは第4号で書いた「引き算」の発想と地続きだ。必要な一点に、必要なだけ。緩んだら、手を引く

ここは私も、日々研鑽の途上にある

正直に書けば、方向・強さ・秒数・緩みの感知——どれも、私自身まだ完成にはほど遠い。ここは第5号で書いたとおり職人の世界で、感覚を磨き続けるしかない領域だ。だからこそ、こうして言葉にして、自分が何を手がかりにしているかを点検している。

補足

本ノートは私の臨床上の感覚・進め方であり、すべての症例・すべての方に当てはまると主張するものではない。圧の方向・強さ・時間は対象や状態によって異なり、安全管理は各自の臨床判断による。改善の感じ方には個人差がある。


本ノートは治療家・専門家向けの覚え書きであり、特定疾患の診断・治療や、当院施術の効果を保証するものではありません。

大黒 充晴

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)

枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。

関連ノート

WEB予約するLINEで予約