同じ手技でも、なぜ結果が変わるのか|治療の「質」を決める2つの軸
大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)
はじめに——「何を見るか」の、もう一段手前の話
第1号でファシアのエビデンスを、第2号で3つの否定を、第3号で動診を、第4号で主訴の場所を治療しない見立てを書いた。いずれも「何を見るか・どこを触るか」の話だ。
今回は、その一段手前——なぜ同じことをやっても、結果に差が出るのかを書きたい。以下は私の臨床上の考え方(私見)であり、定型の手技論ではない。
手技の「種類」ではなく「質」が、結果を分ける
私がやっている関節ファシア整体は、煎じ詰めれば二つだ。関節の数ミリのズレを整えること、ファシアの硬結を解除すること。
正直に言えば、この手技自体は珍しいものではない。同じようなことをやっている治療院は他にもあるだろう。では何が治療結果の差を生むのか。私は、**やっている手技の種類ではなく、その「質」**だと考えている。同じ「関節を整える」「硬結を取る」でも、質が違えば結果は変わる。ここを直視しないと、技を増やすことばかりに目が向いてしまう。
質を決める軸 ①——見立て(原因の場所を見つける力)
一つ目の軸は見立てだ。
臨床で繰り返し実感するのは、症状のある場所は、悪くないことが多いということ。言い方を変えれば、症状が出ている場所は、原因ではないことが多い。だから、まず症状を生んでいる原因の場所を見つける作業が要る。
ここが、治療家のレベルを大きく分けるポイントだと思っている。「症状の場所=原因」と決めつければ、いつまでも出口を撫でているだけになる。原因はどこか——それを見つける能力こそが、治療家の力量を決める。この見立てを、動きの中で体の反応として外部化する作業が動診(第3号)であり、「主訴の場所を治療しない」という第4号の考え方だ。
質を決める軸 ②——点を、的確に解除する力
二つ目の軸は、見つけたあとだ。
原因の場所——関節のズレやファシアの硬結——を特定できても、それを的確に解除できなければ結果は出ない。そしてこの「解除」は、見た目より繊細だ。なぜなら、整えるべき対象は面ではなく、**ごく小さな「点」**だからだ。
この点を、どの方向に・どの強さで・どれだけの時間で捉えるか。そして「緩んだ」という変化をどう感じ取り、どこで止めるか——ここに、もう一つの治療家レベルの差がある。長くなるので、この点の解除の技術は第6号に分けて書いた。
これは職人の世界であり、私もまだ途上にいる
見立ても、点の解除も、最後は感覚に行き着く。以前にも書いたが、治療家は職人の世界であり、感覚を磨いていく作業が必ず要る。私自身、ここは発展途上で、日々研鑽していかなければならないと思っている。完成したなどとは到底言えない。
ただ、感覚的・属人的だからといって、言葉にするのを諦めたくはない。「なぜそこを原因と見たのか」「適切な圧とはどんな感覚か」を、こうして言語化していくこと自体が、自分の精度を上げ、いつか後進に渡せるものになると考えている。このノートを書いているのも、その作業の一部だ。
補足
本ノートは私の臨床上の身体観・考え方であり、すべての症例・すべての方に当てはまると主張するものではない。改善の感じ方には個人差がある。同業の参考になれば幸いだ。
本ノートは治療家・専門家向けの覚え書きであり、特定疾患の診断・治療や、当院施術の効果を保証するものではありません。

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)
枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。