治療家・専門家向け

動診——「症状のない場所」の引っかかりを、動きの中で見つける

大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)

この記事をAI音声で聴く
0:00 / 0:00
※本ノートは治療家・医療従事者向けの専門的な覚え書きです。一般の方の自己判断・施術の代替を意図したものではありません。引用文献はエビデンス確認用であり、当院の施術効果を保証するものではありません。

はじめに——「では、実際に何を診るのか」

第1号でファシアのエビデンスを、第2号で3つの否定(筋肉の硬さ・筋力・歪みは原因でない)を書いた。では臨床で実際に何を診ているか——それが本ノートの動診だ。

私の施術の核を一言でいえば、「実際に痛みの出る動きをしてもらい、動きを妨げている“引っかかり”を触診で特定し、その場で整える」。以下は私の臨床上の進め方(私見)であり、定型の手技マニュアルではない。

なぜ「寝たまま」では見つからないのか

ベッドに寝た静止状態で触っても、その人の本当の問題は出てこないことが多い。滑走の障害は、動かしたときにこそ手に伝わってくるからだ。

第1号で書いたとおり、ファシアは層と層の間をヒアルロン酸が潤滑して滑っている。この滑りが落ちた状態(densification)は、動きの中で「引っかかり」として触知できる。静止=負荷のかからない状態では、その引っかかりは表に出にくい。

だから私は、痛みの出る動きをゆっくりしてもらいながら触れる。たとえば肩なら、肩に手を当てたまま、痛む方向へ動いてもらう。すると「この動きを、ここが止めている」という抵抗が手に返ってくる。

なぜ「症状の場所」とは限らないのか

動いてもらって見つかる引っかかりは、症状の出ている場所とは別のところにあることが多い。これは不思議なことではなく、第1号の筋外筋膜的力伝達(Huijingら)ファシアの連続性から見れば自然だ。力はファシアを介して隣接・遠隔へ伝わるので、痛みの出口(症状)と、動きを妨げている入口(引っかかり)は、しばしばずれる。

第2号で「歪みは原因ではない」と書いたのも同じ枠組みだ。目に見える左右差を追うのではなく、動きを妨げている一点を、手で探す。

「その場で変わる」が、当たりの確認になる

動診のもう一つの要点は、検証可能性だ。引っかかりを特定して整えたら、もう一度同じ動きをしてもらう

  • さっき止まっていた動きが軽くなる/可動域が出る
  • 痛みの出方が変わる

この即時の変化が、「見立てが当たっていた」ことの確認になる。師匠が「そうだ」と言うから正しいのではなく、体が動きで答えを返す。私が神経整体の“感覚だけ・答えのない世界”に物足りなさを感じ、ここに軸足を置くようになった理由でもある(※感覚そのものを否定しているのではない。むしろ磨いた感覚で引っかかりを探り当てること自体が技術であり、私の武器だ)。

臨床への落とし込み(私見)

私の動診の流れを言葉にすると、こうなる(あくまで私の進め方)。

  1. 症状と、痛みの出る動きを確認する(出発点)
  2. その動きをしてもらいながら触れ、動きを妨げる引っかかりを探す(静止では出ない)
  3. 見つけた引っかかり(筋肉・筋膜=ファシア)をその場で整える——症状の場所とは限らない
  4. もう一度同じ動きをしてもらい、変化で検証する(その場の事実で確かめる)
  5. 関節の数ミリのズレ(第2号)と合わせて、戻りにくさを狙う

同じ関節・同じファシアを扱っても、どこを引っかかりと見るか(見立て)と、その精度で結果は変わる。動診は、その見立てを「体の反応」で外部化する作業だと考えている。

補足

本ノートは私の臨床上の考え方・進め方であり、すべての症例・すべての方に当てはまると主張するものではない。改善の感じ方には個人差がある。背景となるファシアの科学は第1号に文献とともに整理した。同業の参考になれば幸いだ。


本ノートは治療家・専門家向けの覚え書きであり、特定疾患の診断・治療や、当院施術の効果を保証するものではありません。

大黒 充晴

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)

枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。

関連ノート

WEB予約するLINEで予約