治療家・専門家向け

痛みの真因は「動いていないところ」——関節微小ズレとファシア硬結の二層施術設計

大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)

この記事をAI音声で聴く
0:00 / 0:00
※本ノートは治療家・医療従事者向けの専門的な覚え書きです。一般の方の自己判断・施術の代替を意図したものではありません。引用文献はエビデンス確認用であり、当院の施術効果を保証するものではありません。

施術の骨格は、二層でシンプルだ

私の施術をシンプルに言えば、二つしかない。

①関節のズレを元に戻す。②ファシア(筋膜を含む全結合組織)の硬結を除去する=リリースする。

ファシアの部分は、要するに「動きを妨げている軟部組織を、すべて解除する」ということだ。

ここで重要なのは、以前から言っている通り、歪みではないということ。目で見てわかる歪みのことを言っていない。

関節のズレは1〜2mmだ。関節は精密機械であり、3mmズレたらもう一切動かないレベルの組織——それが私の認識だ。

だから「足の長さが1cm違う」「肩の高さが違う」という話ではない。関節のズレを戻して結果的に肩の高さが揃うことはあるが、そこから入らない。見た目の左右差は症状と関係がないので、見ない。症状を治すことが目的だからだ。

どこが痛いのか——正直に言う

「施術は痛いですか」と聞かれたら、私はこう答える。

**関節のズレを整える施術は、痛くない。痛いのは、ファシアの施術だ。**痛い場合が多い。もちろんそれを気持ちいいと言う患者さんもおられる。

なぜか。硬結——ファシアの塊が強くなったところは、半癒着のような状態になっている。本来は皮膚を動かしたときのような滑らかな動きが出る組織が、全く動かなくなっている。関節の変形のような形で、筋肉の側に変性が起こり、固まりきった状態としてある。

そこをリリースするのだから、痛みが伴うことがある。変性した組織を、動かさざるを得ない。それが動きを妨げているのだから——これが「なぜ痛い刺激がいるのか」の答えだ。機能回復のための、避けられないコストだと考えている。

本当の原因は「動いていないところ」——だから痛くない

ここが今日の核心だ。「痛いところが原因ではない」の背景には、こういう構造がある。

**痛みを起こすのは、正常な筋肉だ。**それも、動きすぎているところ。

他の動きが悪いところ——関節のズレやファシアの硬結で動かなくなったところ——の分をカバーして、動きすぎているところがオーバーワークになって、痛みを起こす。

会社という組織で例えるなら、こうだ。**全然仕事をしない社員がいて、その人の分まで頑張っている人が、ある日倒れてしまう。**倒れた人は正常だ。ただ、自分のキャパを超えた仕事が来ていた。負担が積み重なって、いつか倒れる。痛み・しびれ・凝りは、これと同じ形で起きていることがすごく多い。

そして、ここが治療の難しさそのものなのだが——

**原因になっているところは、動いていない。動いていないから、痛くない。**活動していないから、痛みを起こさない。

つまり、患者さんが訴えない場所・痛みを出していない場所を見つけて、治療しなければならない。痛いところが原因なら、ある種わかりやすい。そうではないから、見つけるのが難しい。

一般の方には、ほぼ不可能だ。初学者の治療家や、通り一辺倒のマッサージ・ストレッチをしている人にも、わからない部分だと思う。だからこそ、そこを見つけることが、うちの価値であり、うちの治療を受ける意味になる。

患者さんへの説明の仕方

私は診察でこう説明している。

「症状の本当の原因は、動いていないところです。動いていないから、痛みを起こしません。その動いていないところのカバーをして頑張っている正常なところが、痛みを起こします。だから、痛いところが原因だと見ていると、いつまでも根本的に治らない、ということが起こります」

必要に応じて、先ほどの会社の例えを使う。仕事をしない社員と、倒れる働き者の話は、患者さんに一番伝わる。

まとめ——この設計の要点

  • 施術は二層: 関節の1〜2mmのズレを戻す(痛くない)+ファシアの硬結をリリースする(痛みを伴うことが多い)
  • 見た目の歪み(肩の高さ・脚長差)は症状と無関係——入口にしない
  • 原因は非可動部。動いていないから痛まない。痛むのは代償でオーバーワークになった正常組織
  • 痛点中心のマッサージ・ストレッチは、原因部の非可動性を見落とし、慢性化を助長する
  • 「動いていないところを見つける目」が、治療家の価値のど真ん中にある

※本ノートは私の臨床上の考え方(私見)の記録であり、定型の手技マニュアルではありません。

大黒 充晴

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)

枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。

関連ノート

WEB予約するLINEで予約