おうち整体の教え方——手技を増やさない。「根本改善ルーティン」がすべて
大黒 充晴(院長/柔道整復師・臨床23年)
本ノートから、治療を覚えたい家族・本気で学びたい方に向けた連載**「おうち整体レッスン」**を始める。第1回は、手順の前に「何を教え、何を教えないか」という設計の話から。
前提——妻が「治療を覚えたい」と言っている
家族が家でやるなら、何をどう教えるか。実際に妻が治療を覚えたいと言っているので、それを想定して答える。
まず前提として、以前も伝えたように、治療には根本原因の治療と症状改善の治療がある。根本改善させるためには、両方必要だ。
- 根本改善の治療=ルーティン。ほぼ同じことをやる。もちろん痛いところの治療の比重が多くなったりはするが、一連の流れは決まっている。治療の8割はこれだ。
- 症状改善の治療=治療の最後に、患者さんの気になる症状が残っているときに行う。
だから、教える順番は決まっている。**まず根本改善のルーティンを教える。**精度をまず5〜6割まで高めていく——半分くらいまで持っていくことが最初のゴールだ。
「やらせないこと」——ルーティン以外の全部
やらせないことは何か。ルーティン以外のこと、全部だ。
手技が増えれば増えるほど治る、というわけではない。むしろ逆だと思っている。
「これさえやっていれば治る」というやり方を、完璧に仕上げていくこと。それを作っていくことが一番重要で、それが治療の本質だと思う。
治療家のなりたての場合は、手技が欲しい、手技を増やしたい、となる。しかし突き詰めていくと、最終的には逆で、絞り込んでいく。ルーティンを何回もやって、その治療の精度を上げていく。
だから、多くを教えない。多く教えたら遠回りになる。遠回りも学びとしては必要だと思うが、最短で本当に治せるようになるには、それ以外いらない。
ゴールは何か。患者さんを最短で最高の状態に持っていくこと。**患者さんのやりたいことを思いっきりやれる状態を作る。患者さんの過ごしたい生活を取り戻す。**そのための治療なのだから、そのための最短を追求する。
根本改善ルーティンの実際
基本パターンを記す。原則は一つ——チェックは全部やる。制限があれば治療する。なければ次へ行く。
うつ伏せ
- 足首の背屈チェック(底屈制限は見ない。足首はとにかく背屈が重要)。制限があれば腓骨の外旋治療——外果と腓骨頭、つまり遠位部と近位部の外旋を作り、足首の背屈を促す
- 下肢の複合運動——股関節伸展・膝関節屈曲・足首背屈をトータルで促し、あわせて股関節の内外旋の硬さのある方向に調整する。左右行う
- 尾骨の左右変位——右に行っているか左に行っているかを見て、硬さがあれば調整・リリース
- 臀筋群のファシア——主に大臀筋(中臀筋・小臀筋も見る)をリリース
- 腰椎——側屈・伸展の制限(=屈曲側方に固まっているところ)を見つけ、動きをつけていく。左右行う
座位
- 腰椎の側屈制限を治療する
仰向け
- 足首の再チェック——腓骨の外旋性をもう一度見て、脛骨・腓骨と距骨からなる距腿関節としての背屈制限を治療する
- 頸胸移行部を治療する
- 前腕の骨間膜の硬さ=外旋制限を見つけて治療し、次に上肢全体の外旋制限を治療する(外旋制限=内旋で固まっているということ。ここを間違えないこと)
- 首の伸展・側屈制限——屈曲側方に固まっているものを、伸展側方の方向へリリースし、関節のズレを整える
ここまでが、根本改善のルーティン治療だ。
まとめ——教える側の設計思想
- 治療の8割は流れの決まったルーティン。まずこれだけを教える
- やらせないこと=ルーティン以外。手技のコレクションは治す力にならない
- 「制限」の言葉の意味を正確に(外旋制限=内旋で固まっている状態)
- 精度がすべて。同じことを反復し、まず5〜6割の精度へ
- ゴールは患者さんの生活を取り戻すこと。そのための最短だけを教える
※本ノートは指導方針の記録(私見)です。手技の細部・力加減・安全管理は対面指導が前提であり、本ノートだけで施術を再現することはできません。

大黒 充晴院長/柔道整復師(国家資格)
枚方市・大黒整骨院 院長。臨床23年・延べ5万人以上の施術。電気や温熱の機械を使わず、関節の数mmのズレとファシア(筋膜を含む結合組織)への手技を軸に施術する。