腰痛

【枚方】「安静にしていれば治る」は本当ですか?

大黒整骨院(院長:大黒 充晴/柔道整復師・臨床23年)

寝ていれば、治る?
腰痛

「無理せず、寝ていてくださいね」。

腰を痛めたとき、多くの方がこう言われます。周りの人も、やさしさからそう言います。

だから、布団で3日間じっとしていた。そろりと起き上がってみたら——動きはじめが、前より怖い

そして「まだ治っていないんだ」と思い、また横になる。

この記事の結論を、先に書きます。

急性の腰痛については、「安静にするより、動いていたほうがわずかに良い」というのが、世界の研究が出している答えです。

「わずかに」と書いたのは、正直にそう報告されているからです。劇的な差ではありません。ただ、方向は逆ではない——ここが大事なところです。

まず、研究が何と言っているか。

このセクションの要点:安静と活動を直接比べた試験が集められ、結果は「動いたほうが少し良い」でした。

急性の腰痛と坐骨神経痛について、「ベッドで安静にするよう助言する」群と「動き続けるよう助言する」群を比べた10件のランダム化比較試験・1,923名をまとめた解析があります(Dahm ら, コクラン共同計画, 2010)。

結果はこうでした。

安静 vs 活動維持
急性の腰痛活動維持のほうが、痛み・機能ともにわずかに良い
坐骨神経痛両者にほとんど差がない

坐骨神経痛では「安静が効く」のではなく、**「差がない」**という結果です。ここは正確に読む必要があります。

各国のガイドラインも、同じ方向を向いています。

  • 英国のNICEガイドラインは、通常の活動を続けるよう促すことを推奨しています。そして「日常生活に戻る前に、痛みが完全に消えている必要はない」と明記しています。
  • 米国内科医学会(ACP)の腰痛ガイドライン(2017)も、患者に「耐えられる範囲で活動を続ける」よう助言すべきだとしています。
  • 日本の『腰痛診療ガイドライン2019』でも、「安静よりも活動性の維持が有用か」という問いが立てられ、活動性維持を支持する方向が示されています。

なぜ「安静」は、これほど根強いのか。

このセクションの要点:痛い=傷んでいる=休ませる、という直感が正しくないからです。

理由は、直感がそう言うからです。

痛い → どこかが傷んでいる → 休ませれば治る。

すり傷や骨折なら、この直感は正しい。組織が壊れているのだから、守るべきです。

しかし当院は、慢性化していく痛みについては、こう考えています。

痛い場所は、傷んでいるのではなく、働きすぎているのです。

体のどこかに「動いていない場所」がある。動かないその場所の仕事を、別の場所が肩代わりしている。肩代わりしている側が、やがて悲鳴を上げる。それが痛みです。

つまり痛い場所は犯人ではなく、被害者です。

ここで全身を安静にすると、何が起きるか。動いていない場所は、ますます動かなくなります。

被害者を休ませているあいだに、真犯人が固まっていく。これが、寝て起きたときの「動きはじめの怖さ」の正体だと、当院は考えています。

この考え方は、どこへ行っても症状が戻る理由の記事でくわしく説明しています。

体は、思っているより早く落ちます。

このセクションの要点:厳格に動かさないと、数日〜10日で筋力が目に見えて落ちる、という実測データがあります。

「たった数日、休むだけ」と思われるかもしれません。実際に測った研究があります。

  • 健康な高齢者(平均67歳)11名に、10日間の厳格なベッド安静をしてもらったところ、膝を伸ばす筋力が13.2%低下しました(Kortebein ら, 2008)。同じ研究グループの報告では、下肢の除脂肪量が10日で約0.95kg減っています。
  • 若い人でも、5日間の固定で筋力が約9%落ちたという報告があります(Wall ら, 2014)。

注意して読んでください。 これは「ベッドから出ない」「ギプスで固定する」という厳格な不動の数字です。家の中を歩ける程度に動いている方に、そのまま当てはまるものではありません。

それでも、伝えたいことははっきりしています。体は、数日で落ちはじめる。 そして落ちるのは筋力だけではありません。長期のベッド安静では、骨量の低下、心肺機能の低下、血栓のリスク、血糖の処理能力の低下も知られています(Allen ら, 1999 ほか)。

39の臨床試験・17の病態・5,777名をまとめた検討では、ベッド安静によって明確に良くなった結果はひとつも見つかりませんでした(Allen ら, 1999)。

「座りっぱなし」は、安静ではありません。

このセクションの要点:休んでいるつもりで、いちばん動かない姿勢を長時間続けている方がとても多いです。

ここは、多くの方が誤解されているところです。

デスクワークで一日中座っている。痛いから、休みの日もソファでテレビを観て過ごす。

これは休養ではなく、「特定の関節を長時間、動かさないでいる」状態です。

股関節も、背骨も、足首も、その間ずっと同じ角度で止まっています。動いていない場所が、さらに動かなくなる時間です。

体を休めたいのなら、横になって眠ることです。座って固まることではありません。

世間の常識 vs 当院の考え方。

世間の常識当院の考え方
痛いときは安静が第一急性腰痛では動いたほうがわずかに良いと報告されています。痛みが強くならない範囲で動く
痛みが完全に消えてから日常に戻るNICEは「復帰前に痛みが消えている必要はない」としています。戻りながら整えていく
座って休むのも安静のうち座位はもっとも動かない時間。休むなら横になって眠る
動かないと筋肉が落ちるから筋トレする痛みしびれの時期は筋力不足ではなく、筋肉が使えていない状態。鍛える戦いとは別物です
牽引や電気で楽にしてから動くNICEは腰痛への牽引を推奨していません。当院も牽引・電気・温熱に頼りません
コルセットで固定して守る急性期に一時的に使うのは可。ただし支えを外に預けるほど、体は支える仕事を手放します(私見)

※これは当院の臨床経験と、上記の研究にもとづく考え方です。個人差があります。医師から安静やリハビリの指示が出ている場合は、必ずそちらを優先してください。

では、何をすればいいのか。

このセクションの要点:やることを増やさない。やらないことを決めて、あとは歩くだけです。

当院がおすすめするのは、増やすことではなく、減らすことです。

やらないこと——痛い場所を強く揉まない・押さない。痛い場所を伸ばすストレッチを繰り返さない。痛みしびれのある時期に鍛えない。良い姿勢を意識して固めない。長時間座り続けない。コルセットに頼りきらない。

そのうえで、すすめるセルフケアはひとつだけです。歩くこと。

ただし大股でかかとから着地して胸を張る「モデル歩き」ではありません。

だいこく式歩き——力を抜いて、ゆっくり、小股で、何も意識せず、散歩の感覚で。

最初は、家の中を数往復でかまいません。痛みが強くならない範囲で、翌日に持ち越さない量から。

歪みは日々自然に生まれます。人はもともと、歩くことでそれを補正する生き物だと当院は考えています。

あわせて、冷やさないこと眠ること。この3つが土台です。

ただし、動いてはいけないときがあります。

このセクションの要点:ここだけは例外です。次のサインがあるときは、動く前に医療機関へ。

「動いたほうがいい」という話には、はっきりした例外があります。

  • 転倒・事故など、けがのあとから強く痛む/体重をかけられない
  • 足に力が入らない・つまずく・階段が上がれない
  • 排尿・排便がしにくい、股のまわりの感覚が鈍い
  • 発熱をともなう/原因のない体重減少がある
  • がんの既往がある/安静にしていても、夜間・明け方に強く痛み、改善しない
  • しびれや麻痺が日ごとに広がっている

これらは、まず医師の診察が必要な領域です。骨折・感染・腫瘍・馬尾症候群といった、見逃してはならない病気のサインとして知られています。

この記事は、そうした病気が除外されたあとの話をしています。

急に強い痛みが出た直後の対応は、ぎっくり腰の最初の72時間の記事にまとめています。

当院がすること。

当院の施術は関節ファシア整体です。

揉まない・ボキボキしない・電気や温熱に頼らない方法で、まず関節の1〜2mmのわずかなズレをやさしく整え、次に動いてもらいながら見つけた引っかかりをファシア(筋膜)リリースで緩めます。

関節を整える施術に痛みはほとんどありません。一方、硬結(こりかたまった部分)を緩める工程は、痛みを伴うことが多いです。

大事にしているのは「どこを・どの方向へ・どの速さで・何秒」という刺激の精度です。効果の感じ方には個人差があります。

そして施術のあと、あなたにしていただくことは、やはり同じです。力を抜いて、ゆっくり歩く。

「安静にしていたのに、良くならない」——そう感じている方こそ、一度ご相談ください。


参考にした資料

  • Dahm KT, Brurberg KG, Jamtvedt G, Hagen KB. "Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica." Cochrane Database of Systematic Reviews. 2010;(6):CD007612.
  • NICE. "Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management." NICE guideline NG59. 2016(2020年更新).
  • Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA. "Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians." Ann Intern Med. 2017;166(7):514-530.
  • 日本整形外科学会・日本腰痛学会 監修『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂, 2019.
  • Kortebein P, Symons TB, Ferrando A, et al. "Functional impact of 10 days of bed rest in healthy older adults." J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2008;63(10):1076-1081.
  • Wall BT, Dirks ML, Snijders T, et al. "Substantial skeletal muscle loss occurs during only 5 days of disuse." Acta Physiol. 2014;210(3):600-611.
  • Allen C, Glasziou P, Del Mar C. "Bed rest: a potentially harmful treatment needing more careful evaluation." Lancet. 1999;354(9186):1229-1233.

本記事は一般的な健康情報の提供を目的とした教育記事です。診断・治療方針の決定は医師の領域です。医師から安静・リハビリの指示が出ている場合は、必ずそちらを優先してください。

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大黒整骨院 大黒 充晴

腰痛の原因を見極め、その場しのぎでなく根本から整えます。改善後は約半数の方がメンテナンスへ移行されています(※変化には個人差があります)」
院長/柔道整復師(国家資格) 大黒 充晴臨床23年

火・水・金・土 9:30〜12:00 / 13:30〜16:30、木曜 9:30〜12:00月曜・日曜・祝日休診)

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